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ハート流布少年の備忘録

良いと思ったことや作品を「いいね!」と言うためのブログ

崩壊シリーズ『リメンバーミー』が今年もいい崩壊っぷりだった【感想】

終了直後、会場から満足げなため息がそこかしこからドッと聞こえてきました。

観劇後に客席からここまで充足感が溢れでてくるお芝居というのは珍しいよなぁ。

 

 

というわけで、今年も観てきました!崩壊シリーズ『リメンバーミー』のレビューです。

以下、多少のネタバレを含みます。

閲覧の際はご注意ください。

 

 

 

 崩壊シリーズ『リメンバーミー』

www.houkai-st.com

2017年4月13日〜5月14日

於:俳優座劇場(東京公演)、松下IMPホール(大阪ホール)、日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(名古屋公演)、都久志会館(福岡公演)

 

スタッフ・キャスト(敬称略、キャストは公式ホームページの掲載順に準拠)

作・演出:オークラ

 

栗須 健司:山崎 樹範

看場 徹:松下 洸平

大宮 貫二:味方 良介

杉山 杏里:上地 春奈

城山 一路:大水 洋介(ラバーガール

鳥場 明:伊藤 裕一

里田 愛:彩吹 真央

出水 守:梶原 善

 

 

『リメンバーミー』は昨年公演した崩壊シリーズがほんとにシリーズ化した第2作目。

荻窪遊々演劇社の仲間たちが再び集結し、公演の成功を目指します。

元々シリーズものではなかった作品の続きが観られて、キャラクターたちが一年間生きてきた軌跡に触れられるとは!

シリーズ化してくれた関係者の皆さまに感謝です。

 

前回とは違い、作・演出のオークラさんが一から台本を書いている本作。

どのような内容になるのか楽しみにしていましたが、かなりいい意味でグダグダでカオス、かつオチまでよく練られた脚本に仕上がっていました。

トーリーは前作のキャラクタたちが私たちと同じように1年の時を過ごした後の公演を、幕が上がる少し前から舞台が崩壊しつくすその瞬間まで描いたもの。

前作でプロポーズをした栗須座長でしたが、本作では杏里さんとの結婚をお義父さんに認めてもらうために「泣ける」公演を打ち立て、劇中またも奔走、そして時折暴走します。

果たして、今度こそ荻窪遊々演劇社の公演はうまくいくのか……。

 

 

舞台美術もさらにパワーアップ!

 前作での完成度の高さから注目を集めていた舞台美術もさらなる進化を遂げて帰ってきました。

今回も観劇前のスケッチが役に立たなくなるくらい大崩壊してしまうのですが、すごく気合いの入ったギミックの数々にスタッフの皆さんの本気を感じました…!

そんな大作をいらすとやさんでざっくり再現するとこんな感じ。

f:id:alter_74:20170511233436p:plain

 

特に目を惹くのは、中央下手側の盆。*1

応接室、寝室、舞台裏とシーンを代わる代わる転換することができます(まぁ、ご想像の通り、その転換はだいたい失敗するのだけれど)

 また、以前は舞台下手の方にあった鳥場くんのいる音響・照明ブースは、今回は観客側から見て右手上の位置になっていました。

ちょうどテレビのワイプみたいになっていて(NHKでお昼に放送している『ひるブラ』のワイプのように窓から身を乗り出すことも)観劇中は思わず目を増やしたくなりましたね。

 

 

計算された笑いによる安心感

今回も運良く複数回観る機会があり、スルメのように噛めば噛むほど美味しい、否、観れば観るほど面白い荻窪遊々演劇社の公演を繰り返し味わうことができました。

回を増すごとにテンポや間、セリフが改良されていて、「この座組はどこまで気持ちよく笑わせてくれるんだろう」と思わされました。

 そして冒頭でも書きましたが、周りのお客さんたちの満足げな様子が印象的で……。

劇場を後にする際も、いろんな層のお客さんがそこかしこで「こんなに笑ったのは久しぶりだね」と笑いあっていました。

このように多くの観客が大いに笑えたのは、第1作の『九条丸家の殺人事件』に引き続き、今作でも計算づくの大崩壊が起こったからでしょう。

脚本上で緻密に伏線という名の導火線を引き、それを舞台上で計画的に実行することで笑いの爆発を巻き起こす。

アドリブや本当のハプニングのようにも見える劇中劇ですが、きちんと下ごしらえをしたお芝居であったから、あんなに思い切り笑えたのではないかなぁと思います。*2

 

ちゃんと計算してミスをするから、笑いにつながる。

安全・安心設計とそれをしっかり施工するスタッフ・演者がいてはじめてこっちも安心して笑えるんだよなぁ。

キャスト・スタッフの皆様の努力があったからこそ、観劇後の満足度があんなに高い演劇になったのではないでしょうか。

 

 

と、問いかけっぽい一文を残しつつ、キリのいいところで本記事を締めくくらせていただきます。

キャスト・スタッフの皆さま、大千穐楽までお疲れ様でした。

そして、安心して笑えるお芝居を魅せてくださってありがとうございます。

2作目までと言わず、この先も定期的に荻窪遊々演劇社の公演を観ていけたらいいなぁ……なんて思ってますので、今後とも末永くよろしくお願いします!

 

 

そして、なんとなんと、ファン待望のDVD化が決定しました!

ありがとう、おめでとう!

 

 

前作『九条丸家の殺人事件』のレビューはこちら↓ 

alter-74.hatenablog.com

 観終わった後、「面白かった!すごかった!」と興奮したままガリガリ書いたので、今読むと荒い文章が目につきますが、当時の私のストレートな観劇の喜びを感じられる、とても思い出深いレビューです。

 

 

*1:盆とは、演劇の舞台装置の一つ。『リメンバーミー』で使われたのはステージの床ごと回る「回り舞台」ではなく、スタッフが作った大道具でしたね。盆が回転して、劇中劇が始まった時は思わず「ま、回ったぁ〜〜〜!」とひとり客席で脳内ファンファーレ鳴らしてました。めっちゃ感動した。

*2:観劇したころ、ちょうどあまり耳にしたくないと思わざるを得ないニュースが世間を覆っていたのもあり、手放しに笑える舞台の存在が本当にありがたかったです。普段頭でっかちにいろいろと物思いするのが好きな性質ではあるのですが、あの時は珍しく「これ以上脳を使いたくない」という気持ちになっていました。崩壊シリーズを観ている時は少なくとも、そういった気持ちから解放された気分になれたため、何も考えない時間の良さに気がつけたような気がします。